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花咲か日記

2017年6月17日

きっと忘れない 漁師さん編

いくつだと思う?
当てたらタコをひとつあげるよ

そう言って楽しそうに笑う男性は
小柄で細身の漁師さん

同行した写真仲間に年を尋ねられ
ピタリと当てたら 今獲ってきたばかりのタコをくれると言う

深く刻み込まれた顔のシワから
そこそこの年齢が予想されたのだけれど
そのきびきびとした動きを見ると それほどいっているようにも思えない


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いくつだろう‥
あれこれ思案していたら

隣にいた写真仲間が 大きな声で「77歳 」と答えた

「 93! 93だ 」

漁師さんは愉快でたまらないといったふうに
笑っている

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それにしても93 とは
すごすぎる‥


船の中の巨大なタコが ゆっくりと動く
いったいどれくらいの重さがあるだろう

感心してタコを眺めていると
生きてるから 触ってみろと言う

ぬるぬる ぬめぬめ

無理です‥

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予め用意してあったシートを船の上に被せ
漁師さんが 昔話に花を咲かる

浜言葉はとても難しくて 話してくれることの7割が分からない
足りない部分は想像力で補いながら相槌を打ったのだが

カンの鈍い私にも
彼が勇敢で 聡明で やさしい人であることだけはよく分かった


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「それじゃあ 先がありますからこの辺で
いろいろとありがとうございました」


挨拶をすませ
互いに船から離れた途端

シートをかけただけの船に カラスがやって来るのが見えた
そうか あれはカラス避けのためのシートだったのか


カラスは青いシートの周りをピョンピョン移動しながら 隅をつつき始める

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知らせなきゃ と思った瞬間
写真仲間の声がした

「 カラスが来てるよ 」
「 タコを狙ってるよ 」


「 あぁ いいんだ 」 と片手を上げる漁師さん

なんだか めちゃくちゃ かっこいい



ゆっくりと時間が流れる初夏の一コマ


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もうこの漁師さんにお会いすることはないかもしれないけれど
きっと私 この日のことを忘れない




おまけ

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で タコってなに?




コメント

ステキな出会いでしたね
93とは思えない猟師さんです

海とともにいきてらしたのでしょうねえ

いい写真といいお話
モノクロの写真がよりいっそう なにか物語っているようでステキでした

ありがとうございます

ソフィー様

予定にない偶然の出会いほど 長く心に残る気がします
不思議なことです
背筋をシャンと伸ばして歩いてゆく漁師さんの後姿を見送りながら
「年をとるのも 案外悪くないな」と‥

残りの人生 どれほどの出会いが待っているのか分かりませんが
ちょっとワクワクしています

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